投資先の声

「リアルな起業経験がある投資家が伴走する」——投資家とスタートアップの新たな関係性 #1

Anique 代表取締役 中村太一氏
× Heart Driven Fund ヴァイスプレジデント 熊谷 祐二

Anique 代表取締役 中村太一 氏
2006年博報堂DYメディアパートナーズ入社。TV・雑誌・WEB・コンテンツ・マーケティング・新規事業立ち上げを経験。
主な仕事に、「実写巨人初登場CF」「実物大巨人プロジェクションマッピング」「進撃の巨人リアル脱出ゲーム」「ダイヤのA 母校にエールを」。2019年Aniqueを創業。
マンガを読んだりアニメを観たりして、企画を立てるときがワクワクします。

「初めて会った時からほぼ決まっていた」投資の決め手とは

中村:
資金調達の準備を始めていた頃、アカツキに転職した知人が声をかけてくれたのがきっかけでしたね。彼のアカツキでの活躍をみていて、アカツキ自体に魅力を感じていました。当時僕は、アカツキさん以外に数社のファンドの方とお会いしていました。どの方も素晴らしい方々だったのですが、最終的な決め手のひとつは、担当してくれた熊谷さんの“豊富な起業経験”それが特に刺さった部分でした。


投資銀行や普通の投資ファンドでは、経済的な支援メインなのが一般的です。そんな中、Heart Driven Fundは、全員が起業家集団で、自分でもリスクを取って事業を仕掛けてきた人たちによるファンドだったので、珍しいと感じましたね。ご自身がぶち当たった様々なハードシングスに裏打ちされたアドバイスは、相談する側としてもやはり貴重だと思いました。

また、Aniqueは、漫画やアニメ、ゲームといったアートワークの所有・体験を、ブロックチェーンをはじめとした先端技術を用いて届けるサービスです。アカツキさんが取り組まれているエンタメ領域の事業とも相乗効果が期待できそうだとも思いましたね。だから最初にお会いした時から、気持ちはほぼ決まっていたんです。

 

熊谷:
僕が太一さん(中村太一)への投資を決めた1番の理由は、「エンタメへの愛の深さとビジョンへの共感」でしたよ。初めてお会いした時のことは未だに全て覚えていて。作りたい世界や提供したいサービスの価値、漫画やアニメへの愛を熱く語ってくれたんです。その愛の深さ、熱量の高さに触れて、彼が描く世界を「一緒に作っていきたい」と純粋に思ってしまいました。

Heart Driven Fundは、単に儲かることだけでなく“心から応援したいと思えること”や“彼らの描く世界が実現できたらハッピーかどうか”を慎重に見極めています。そういう点で、太一さんはお会いした時から魅力的でした。

また、思いだけではなく、前職時代から既にその領域を形にされていましたし、タイミング的にもドンピシャだと感じましたね。今この時代だからこそ、ブロックチェーンを活かして解決できる問題や新しいバリューがありますから。

欠点を打ち明けて巻き込む。健全なプレッシャーのある関係性

中村:
アカツキに支援してもらおう、と決めた後は、1ヶ月間ほどかけてアカツキがどんな形でAniqueに関わるのがベストか、一緒に議論しました。他のVC、エンジェルからの投資の有無や、投資額の設定を一緒に検証をし、細かいスキーム決めをして。エクセルを叩いて一緒に事業計画を作ったのも懐かしいです。最初から常にお互い隠すことなく課題点の洗い出しができ、スムーズに進められる関係でしたね。

熊谷:
太一さんは、本当に正直に話してくれるんです。「これは得意ではないので、熊谷さんにお願いしたいです」とかまで、ちゃんと言ってくれる(笑)。もちろん、しっかりご自身でやるところはやるんですよ。ただ、これから投資をしてほしい人に、自分の欠点やダメなところを開示するのは簡単じゃないはず。それができる起業家は少ないなかで、素直に伝えてくれる太一さんだからこそ、一緒に進めてこれたんだと思います。

中村:
一人で全部できる人っていないと思うんですよ。事業を形にしていく上で足りない部分は素直に「助けてほしい、困っている」と言った方が、チームとしてうまくいく。Aniqueのビジョン達成をゴールにおくと、僕自身をよく見せるとかは本当に些細なことというか。だから、熊谷さんにも困っていること、できてないことを割と最初の頃から相談できてましたよね。

熊谷:
結局“巻き込み”がうまいひとがうまくいくと思うんですよ。彼は割とそれを天然でできちゃうタイプです。

中村:
今でも悩んだときは「採用に困っています」「この人手が足りません」「ここがパンクしそうです」と素直に伝えていますね。その方が早く手を打てるので、結果的に早く前へ進む。

熊谷:
隠しちゃうと問題が大きくなってから爆発してしまったりもするのですが、太一さんは小さなことでもすぐ打ち明けてくれるから、良い状態で進んでいるんだと思います。

中村:
とはいえ、僕は仲良しこよしの関係だけでは良いものは作れないと思っていて。熊谷さんから「もっとこうするとうまく回るよ」と健全なプレッシャーを常に与えてもらえるから良いんですよ。それが仮に、どれだけキツイことだとしても、Aniqueのために必要だと素直に受け入れられるのは、相手が熊谷さんだからだと思います。

内容が一緒でも、“誰に言われるか”で人は変わるじゃないですか。これまで頭の良い方はたくさん見てきましたが、机上の空論なのか、トライして見えてきた解なのかは、見ていればすぐに感じ取れてしまうもの。自身が多くの事業をされてきた経験から学んでいるからこそ、アドバイスがスッと入ってくるんです。

広報やデザイナーもパートナーとなる手厚いハンズオン体制

熊谷:
週1回定例会議を行うと同時に、日々メッセンジャーで気軽に連絡を取り合いながら進めていますよね。プレスリリースの前は、日々どころか“毎時間”くらいの勢いで連絡をとってるかな(笑)。相談事項は、売り上げをどう伸ばしていくのか、事業構想から戦略、採用や人のマネジメント、広報におけるメッセージングまで全般的に。

中村:
実はアカツキの広報チームが、メディア掲載やプレスリリースまで動いてくださっているんです。本当に親身になって考えてくれて、パートナーであり、良いトレーナーのような存在です。

熊谷:
普通だと、知識と経験を持っているがゆえに、正解を押し付けたりポジショントークをしたりする人もいると思うんですよ。でもアカツキのメンバーは「いくつかの選択肢がありますが、どれをやりたいですか?」と常に対話をしながら引き出してくれる。我ながら良いチームだなと思いますね。僕もまた次に会社を作ったら彼らに支援してほしいくらい(笑)。スタートアップが自分で広報戦略を立てて、効果的なプレスリリースを作ったり、メッセージにマッチするメディアの掲載先を獲得するのは結構ハードですから。

中村:
そうですね。押し付けではないからこそ、自然と受け入れられて、自然と行動に移したくなる。また、必要に応じてデザイナーや開発部門の方とも繋いでいただきましたね。

熊谷:
ちなみに、週1回の定例会議の使い方は、フェーズに合わせた会議体としての型をアドバイスした上で、起業家側に任せています。サービスのKPIを毎週モニタリングをしたり、経営課題を持参しディスカッションをするなど、様々ですね。たまに「今週はあまり話すネタがないので大丈夫です」と言われるケースがあるのですが、僕はどんな状態でも良いので会うべきだと思っていて。究極的には“雑談をしてくれるくらいがちょうど良い”と思っているんです。その中でこそ、お互いの本音が話せるし、本質的に困ってることが炙り出てくる。

また、フェーズによって支援の仕方は変わるのですが、現状のAniqueの規模だと起業家はどんどん現場に追われ、視座が下がってしまう。だから「もっと大きい夢の話しようよ」と伝え、色々ブレストすることもありますね。

中村:
僕はサービス開発に没頭しやすいので、一歩引いてCOO的な目線で意見をもらえるのは大変ありがたいです。今の事業の次に築いていくべきものは、そうしたディスカッションの中からも生まれてきたりします

“事業を作るのは人” 組織作りをナナメの関係から支援する

中村:
アカツキの人・組織づくりの影響は、特に強く影響を受けています。熊谷さんって「事業を作るのは結局は人」という考えがあるなと感じていて。どれだけ崇高な思想や強いビジョンを掲げても、それを形にして行くのは一緒に働いていくメンバーや、パートナー。そう考えているからこそ、彼らのモチベーションを高め、迷いや不安には寄り添い、実力が発揮できるよう積極的に動いてくれるんです。僕だけじゃなく、他のメンバーに対しても。

以前リモートワークで働くメンバーとのコミュニケーションに悩みを抱えていた際にも、相談をしましたね。頂いたアドバイスをもとに、合宿を開催したり、今この場に集まった人たちの心持ち・状態を分かち合うチェックインをAniqueでもトライしたところ、作りたい世界観への解像度や共感値が深まり、「会社を大きくしていこう」という結束が生まれていきました。

まさにメンバーにとって“いいお兄さん”みたいな存在ですよ。松尾氏(Aniqueのメンバー)は熊谷さんが大好きすぎて、しょっちゅういろんな相談をしています(笑)。

熊谷:
事業は人が作るので、人が大事っていうのはもちろんあるんですが、それ以前に僕はゼロイチをみんなで作っていく過程が好きなんですよ。

小さいボロアパートに一緒に住んで、泣いたり笑ったり喜んだり、一緒に漫画を読んだりゲームをしたり…。“家族みたいな空間”というか、文化祭の前夜というか、そうしたカルチャーがただただ好きなんです。だから、Aniqueのオフィスにも行くしSNSでもよく絡んじゃうんですよね。たとえば松尾くんなら、一見すると大人しく好青年キャラ、なんですが、彼のキャラが変わってチーム内で輝く瞬間があるんですよね。そのスイッチを見つけて、押してあげるのが最高に楽しいです。

Aniqueのチームは、みんな本当にいい人たちが多いんです。キャラも面白くて、いつ話しても楽しい。僕はAnique内に役職がない“ナナメの関係”だからこそ、言いやすいことがあるんでしょうね。メンバーから声をかけてくれることも結構あって、全員とランチに行ったりもしています。僕自身Aniqueにとってメンバー間の繋がりや雰囲気を間接的に高めていくような存在になれたら嬉しいですね。

中村:
そうした人がいる組織は、ハイパフォーマンスになることが多いですよね。うまくいっている経営者やプロデューサーは、チーム全体を見渡して細部までケアする人材を置くことを大事にしている気がしますね。

一緒に海を越え、アジアの架け橋へ——ふたりが描く未来

熊谷:
今はハンズオンで走ってますが、最終的には、僕らが必要じゃなくなる状態が理想ですよね。依存しないで自走できるようにするまでがハンズオンに注力する僕らの役目ですから。だからこそ、広報業務もアカツキの事業部広報担当が支援したのちに、誰が今後ノウハウを受け継いで巻き取るのか、体制までに気を使う。すると、マーケティングや広報の話だけでなく、人や組織の話もセットになるんです。最後は「熊谷に話すことはもうないです」と笑顔で言ってくれることを願っています。太一さんの今後の目標はどう?

中村:
僕はまずこの事業を成功させること。Aniqueが存在している理由は、アニメや漫画をはじめとした日本の最高なコンテンツと、世界中にいるファンとの間に“特別なつながり”を作ることなんです。日本や世界中にいる何十、何百万人のファンにAniqueを楽しんでもらえるようにしていきたいと思います。

熊谷:
漫画やアニメの業界がエンタメとしてもっともっと発展し、喜びを生み出す世界はアカツキとしても作っていきたいんですよ。Aniqueにはそれを実現できるポテンシャル・素材があると思うし、今のタイミング的にもバッチリです。アカツキはゲーム、アニメ、映画、イベントやアソビルのようなライブエンターテインメントを国内外で取り組んでいるので、それらのネットワークや知見をAniqueに渡していきたいですね。一緒に海を越え、アジアの架け橋になりましょう。

中村:
僕は、結果を作ることに勝る感謝の言葉はないと思うので、その実現に向けて走っていきますよ。

 

Anique
https://anique.jp/

熊谷 祐二 / Heart Driven Fund ヴァイスプレジデント
https://hdf.vc/team/kumagai/

文:水玉 綾  写真:大本 賢児  構成:鶴岡 優子

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