投資先の声

「同じ世界を目指すビジネスパートナー」—— 投資家とスタートアップの新たな関係性 #3

株式会社ツクルバ 代表取締役COO 中村真広 氏
× 株式会社アカツキ 共同創業者 塩田元規

株式会社ツクルバ 共同創業者・代表取締役 / 株式会社KOU 代表取締役 中村 真広 氏
1984年生まれ。東京工業大学大学院建築学専攻修了。不動産ディベロッパー、ミュージアムデザイン事務所、環境系NPOを経て、2011年に株式会社ツクルバを共同創業。2019年には東証マザーズに上場。株式会社KOUの創業に参画し、2019年には同社代表取締役に就任。著書に「場のデザインを仕事にする」(学芸出版社/2017)他。

上場前のアカツキが、早くからツクルバに投資をした理由

中村:
最初はクライアントとして株式会社アカツキと出会ったんです。「間伐材を使って森がより良くなる」「ホタルを救う」というコンセプトで、アカツキの中目黒オフィスの3階をリノベーションさせてもらったんです。

塩田:
アカツキはまだ上場前で、僕らもまだまだ成長途中。投資をするのはかなり早いタイミングだった。でも、ビジョンがマッチした仲間の会社、いい会社には投資をしたいとてつ(香田哲朗 アカツキ共同創業者)と話していたので、ツクルバに思い切って投資をしたんです。「ビジョンドリブン」でね。当時のアカツキにとって3000万円の投資はとても大きい額。僕らにとっても勇気が必要でした。

中村:
クライアントとしてアカツキと出会った後、アカツキのメンバーとキャンプなどにも一緒に行き、同世代の仲間として仲良くさせてもらっていました。スタートアップ企業の「いろは」を聞こうと、同世代の起業家として活躍していたてっちゃん(香田哲朗)に相談に行ったところ、出資をしてもらえることになったんです。

共同創業者のヒロキ(村上浩輝 株式会社ツクルバCEO)と「誰に応援してもらうか」を考えていたところで、アカツキから投資のお話をいただき、出資を受けることになりました。

投資先で最初にIPOしたのがツクルバ。「ビジョンドリブン」が結果を産む

塩田:
アカツキがこれまで投資してきた企業の中で、最初にIPOしたのがツクルバです。出資した当時、ツクルバのビジョンに共感しての投資だったから、アカツキとしてもチャレンジだったけど、結果としてそこがリターンを生み出すことになった。僕らもこの結果にはすごい、と思いましたね。

僕らは、ツクルバと同じく、この世界をよりよくしたいっていう気持ちがあって、助け合うつもりでお金を出しています。困った仲間を助けたいという想いが先にあっての投資だから、ある意味健全だよね。もし失敗してしまっても、イライラはしない。でも、それがお互いにとっていい成長にちゃんとつながって、こうして結果が出ている。

中村:
当時の僕らはまだまだ創業期で、何もかも手作り感が満載だった。cowcamo(カウカモ)をやると言っていたのに、エンジニアもいない状況で。僕がUIをデザインしている時期でした。UIデザインもこの時にやったのが初めてで。そんなタイミングで、ツクルバの志に共感して、応援してくれるアカツキの気持ちが何よりもうれしかった。

塩田:
ツクルバに投資をしようと決めたのは、ツクルバという会社が持つ世界観があって、それが好きだと思ったからですね。まーくん(中村氏)とヒロキの二人が「ソニーみたいな会社になりたい」と熱意を持って話していて。「こういう会社いいな」って思ったから。ツクルバがちょうどビジネスとして加速するタイミングで、その成長性もいいなと思いました。

中村:
めちゃめちゃ嬉しい。実は投資を受ける方も同じで、根が繋がった仲間からの応援だしお金だから、絶対に裏切れないじゃん。それが僕らのいい原動力につながるんですよね。

企業と企業の境界を超えていく。ハートドリブンという世界観

中村:
実はその後、2度目の出資を相談したんです。ツクルバが成長してきて、上場プロセスに進むために集中しないといけないタイミングだったんですけど、僕はどうしてもやりたいと思った事業がありまして。

ツクルバの外に株式会社KOUという別会社を作って、合弁プロジェクトとしてやることになり、資金を入れて事業のアクセルを踏みたいというタイミングで、元規くん(塩田)に相談しました。

塩田:
KOUの思想や世界観に共感し、投資だけでなく社外取締役としても参加することにしたんです。僕は「ハートは境界を越える」という世界観を持っているので、アカツキ、ツクルバ、KOUの境目はあまり強く意識していないんです。境目はゆるやかに、みんなで幸せになる世界観。それが「ハートドリブン」です。

ハートドリブンは優しいだけじゃない。鋭く切り込んで嵐を起こす

中村:
KOUに出資してもらってから、定期ミーティングで元規くんが「嵐」を起こしましたよね。僕のなかで「2019年のベストミーティング」に選ばれてはいるんですけど。

塩田:
僕は投資家としてよりは「相手の気持ちに寄り添いたい」と思っているので、まーくんが「モヤモヤしてるように見えるけど、KOUのみんなと気持ちがわかちあえているのかな?」と話したんだよね。

中村:
元規くんの意見は鋭かった。僕自身に気持ちの揺らぎもあったんですけど、それに自分では気づきながらも隠していた。それが見えてしまったタイミングでしたね。

その時、ちょうどツクルバが上場する前後のタイミングで、投資家との交渉などは他の方に任せていたこともあって、「自分はツクルバにちゃんと貢献しているのか?」という焦りや、気持ちの揺れがあった時期でした。だから、何か自分の価値を見出そうと、短期的な新しいプロジェクトを作っては、上手くマネージメントできずに結果が出ない。そんな時、元規くんがいるミーティングでKOUについてのプレゼンをしたんです。

塩田:
プレゼンは頑張ってたけど、「気持ちがスッキリしていない」というのは伝わってきました。どこか苦しそうで、何かを自分に言い聞かせている印象を受けたんです。なので、まーくんのスタンスの揺らぎや、2つの会社での時間の使い方に対して、参加者のみんなが納得出来るように僕が誘導したという感じですね。「何の仕事で会社に貢献できるか?」よりも、想いを伝えられるようにする環境づくりが大切だと思って、それを伝えただけ。 

ピポッドを決断した2度目の嵐。言わせたのは起業家本人

中村:
このミーティングを受けて、僕の立ち位置やバランスを考えるという問題が解決した後で、元規くんは、2回目の嵐を巻き起こします。それは、KOUがアプリ開発をしてた時です。

塩田:
アプリを広めるには資金が大量に必要になりますし、アプリという形がKOUのイメージに合うのか疑問に思ったんです。まーくんは「自分が表現者でありたい」という人だから、アプリよりも「職場のおもちゃメーカー」みたいな感じで、職場のおもちゃを作ってAmazonとかで実際に販売した方がいいんじゃないかな?って思ったんです。

中村:
「アプリじゃなくて、紙のカードにして売ったらいいんじゃない?」と、元規くんがいきなり会議で言ってみんなざわつくんです。だって、既にアプリを開発しているエンジニアがいるわけです。「今、それ、言っちゃう?」みたいな感じです。 

僕もその時はアプリを作る準備もしていたし、みんなになんて言えばいいのか、迷ったんです。でも、「職場のおもちゃメーカー」という言葉を聞いて、純粋にそっちが面白そうだなと思いました。でも、アプリ開発を始めている状況だったから、この先どうしようかなと。

それで改めてアプリ開発を見直すと、スケジュールもかなり厳しいことが見えてきて、アプリからカードへ転換することにしたんです。結果的には「いい嵐」だったのかなと思います。

塩田:
僕が言ったことかもしれないけど、僕はまーくんの心の中の気持ちを嗅ぎ取って言っているだけだから。それに、会社を一緒に経営している同士では言えないことでも、半歩外にいる僕だから言えることだったと思うんだよね。

チャンスを引き寄せるコツは、心を開き受け入れること

中村:
ツクルバとKOU。2社にわたって出資をしてもらいましたが、出資してもらったことで元規くんとの関係が深まって、友達みたいな関係になりました。

塩田:
投資をして仲良くなれるんだったら、投資側としても幸せですよね。そんな素晴らしい関係が築けていれば、きっとビジネスでもうまくいくと思うし。

中村:
僕とアカツキみたいなすごい出会いは、起こるべくして起こるような気がしていますね。「流れを呼ぶ」心の開き方というのはあると思う。無理をせず、素直に受け入れるような生き方をしていると、出会える気がします。

塩田:
僕はまっすぐ生きているかどうか、だと思う。自分の人生とお天道様に胸を張れているかどうか。人格が歪んでいるとそういうオーラが出ているし、表情も歪んでいるような感じもするし。スタートアップの起業家の人の中には、ガードが固くて「物事を言わせない」雰囲気の人はいるよね。でも、それだと心が通わせられない。

中村:
「心を開いている」と思えているタイミングの方が、いろいろなことが起きる。なぜなんだろう。

塩田:
自己信頼があるからなのかな。目の前で起こっている現象をどう捉えるか、ですね。目の前で起こっている悪いことも「自分が引き起こしたのかも?」と捉えたり、「自分の可能性を広げられる機会かもしれない」と思えたりすると強いですよ。すべてを受け入れられる強さがあれば、周囲で起こる現象の全てが自分の力になるわけですから。ずっと成長できるもん。心理学では、これを「投影の引き戻し」と言うんですけど。

中村:
心を開いている方が、アンテナの感度が高まるしね。

塩田:
さまざまなことを受け入れれば、その人の器が広がって、その人のなかに入りやすくなって、結果的に物事も言いやすくなるし。最初に出会った頃よりも、まーくんと話しやすくなっている気がするね。そういう相手の方が、コラボレーションとかも生まれやすい。

「幸せな投資」を受けるために必要な起業家のスタンスとは

塩田:
僕らとツクルバ、KOUのような、幸せな投資の関係を築くには、必要なスタンス、やり方もあると思うんです。最初の投資を受ける人はまずは情報を集めて、一緒にビジネスを作って「気持ちがいい」と思える投資家を探し、出会える努力をすることが大切です。シリーズAくらいの初期段階では、パートナー選びや資本政策に対して特に慎重になった方がいいでしょう。

投資額が多いと言う理由だけでパートナーを決めてしまうと、その後に、ビジネス上のズレを生んだり、大変な状況に陥るということもあります。なので、金銭面の条件が多少劣ったとしても、「一緒に走ってくれる」投資家を選んだほうが、将来的には良い結果を生み出すのではないかと思います。 

アカツキが目指しているのは、「力や圧でコントロールしない世界」。理想論だと言うひともいるかもしれませんが、僕らはその方がビジネスの上で合理的だと思っています。投資家が起業家にとっての本当のパートナーにならないと、良い投資先と組めなくなる時代が近い将来訪れます。

資金だけ持っている投資家はたくさんいるわけですからね。今後は、起業家と投資家が牽制し合いながら、良いビジネス作りが出来る環境が整えば良いですね。

中村:
アカツキは「投資家は応援団」と言ってくれています。起業したばかりで不安な時期だからこそ、「応援団」には根っこの部分で気持ちが繋がっている人が入ってくれると心強いですよね。投資家も僕らと同じ旗のもとに集う仲間みたいな感じがあっていいはず。

KOUはこれから、職場で感情をシェアするためのアナログカードのビジネスを始めようと思ってます。カードを使って感情を自覚し、仲間と分かち合えば、関係性も深まります。さらには会社という枠組みを超えて、まわりの人との向き合い方を考えることもできるはず。まずはいろんな会社に導入してほしいし、一緒に使いたい。アカツキとも一緒にやりたいですね。

塩田:
アカツキとツクルバ、アカツキとKOU。まさに創発、ですね。一人が出すカラフルな光で誰かが輝き、良い影響を与え続ける。そういう世界をこれからも作っていきたいです。

 

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株式会社ツクルバ
http://tsukuruba.com

株式会社KOU
https://about.kou.by/

塩田 元規 / Genki Shiota 株式会社アカツキ 共同創業者
https://hdf.vc/team/shiota/

文:池田 鉄平・白鳥純一  写真:大本 賢児  構成:鶴岡 優子

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